絵本は,見ていて楽しいものから,短いお話のなかで教訓や人にとって大事なことを分かりやすく伝えてくれるものもあり,大人が読んでも楽しめたり,印象に残る絵本が多くあります。
最近,とても心に残った絵本は,「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」という本です。
これは,環境が悪化した地球の未来について話し合うために,2012年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた国際会議のなかで,ウルグアイのムヒカ大統領が行った演説を分かり易く絵本にしたものです。
わたしたちは,もっと便利でもっとよいものを手に入れようと,さまざまなものをつくってきました。おかげで,世の中はおどろくほど発展しました。
しかし,それによって,ものをたくさんつくって売ってお金をもうけ,もうけたお金でほしいものを買い,さらにもっとたくさんほしくなってもっと手に入れようとする,そんな社会を生み出しました。
経済的な豊かさや利便性を追い求めた結果,競争をくりひろげることとなり,思いやりの気持ちもどこかへいってしまった。そんな,自分たちがつくったしくみや生き方を考え直さないといけないとムヒカ大統領は訴えます。
ムヒカ大統領自身は,給料の大半を貧しい人のために寄附し,公邸には住まず,友人からもらった古い愛車を自分で運転するという質素な生活を送っているそうです。
『貧乏とは,少ししか持っていないことではなく,かぎりなく多くを必要とし,もっともっとほしがることである』このことばは,人間にとって何が大切かを教えています。
水不足や環境の悪化が,いまある危機の原因ではないのです。ほんとうの原因は,わたしたちがめざしてきた幸せの中身にあるのです。見直さなくてはならないのは,わたしたち自身の生き方なのです。
日々,色々な製品が発売され,どんどん世の中は便利になっています。
でも思い返せば,私がまだ小さい頃は,今ほど物を買い替えたりしなかったような気がしますし,家庭にあるものも最低限の機能でまかなえていたような気がします。そして,それで不便さを感じることもありませんでした。
しかし現代では,情報が発達したこともあり,次々と新しいものを目にしますし,今あるもので十分なのにそちらへ移ってしまうことも多々あります。
なかなかすぐに改めるのは難しいのかも知れませんが,この本が語りかけることを心に留め,少しでも本当の意味でより良い世の中になれば,と思います。